【前編】秋田〜苫小牧/自転車一人旅2018【後編】

2018.08.19 Sunday

Hi, there. Takaです。
今回は先日のお盆期間中に行った「秋田〜苫小牧」の自転車旅をお送りします。

綿密に立てられた計画からのまさかの顛末までご覧ください。

 

では、どうぞ!

 

 

2018年7月中旬


「埼玉〜京都600km 自転車一人旅'2013」のエピローグで、私は今年の目標に「短期間のカジュアルな自転車旅」を掲げており、それを果たせる機会を伺ってきた。夏本番を向かえ、そのタイミングがようやく訪れた。今回の自転車旅は、ジムの夏季休館日の4日間で日程を組んだ。筋トレできない期間を自転車に充てるという訳だ。


とはいえ4日間という期間は、長いようで意外と短い。「やりたいっ!」と思えるようなルートで旅をするには全くもって不十分だった。
時間制限がある中でも、できれば2013年のように遠方まで行きたかった。となると輪行を絡めることになるのだが、秋田発では手段や目的地が限られてくる。新幹線は高いし、発着駅周辺にそれ程魅力的なルートが見当たらない。秋田発の夜行バスはどれも輪行が禁止されていた。

 

色々と考えた結果、フェリーを利用することにした。フェリーなら安価で移動と宿泊を兼ねることができる上、輪行袋を使わず乗船できるので荷物を減らせるからだ。秋田港から発着するフェリーは、1年前に初めて北海道を訪れた時に利用した。その際は、苫小牧から車で「納沙布岬〜宗谷岬〜札幌〜苫小牧」と巡ったが、まだ道南には行ったことがなかった。そこで、残ったピースをはめるように「函館〜苫小牧」を走破する計画を考えた。


策定したルートはこうだ。


初日はまず、日本海沿岸の秋田市内から内陸の「角館」を目指す。角館は去年参加した「秋田内陸ウルトラマラソン」のスタート地点だ。そこからマラソンコースを辿って100km北上し、ゴール地点の「鷹ノ巣」を経由し、県北の「大館」を目的地とする。宿泊は大館在住の友人宅だ。

2日目は大館から青森県へと入り、「青森」から津軽海峡フェリーで北海道に上陸。「函館」のネットカフェで一泊。

3日目は函館から内浦湾沿岸を北上し、苫小牧までの距離を詰める。4日目の夕方に「苫小牧港」でフェリーに乗船し、翌朝秋田港に帰還する。
最初は「苫小牧in」の南下ルートにしようと思ったのだが、1ヶ月前の時点で秋田〜苫小牧のフェリーに空きが無かった為、「函館in」の北上ルートにした。


ポイントとなるのは「函館〜苫小牧」だった。この区間は最短ルートでも240km以上あり1日での走破は困難なのだが、中間地点にネットカフェがありそうな町もなかった。安価な宿にあたってみたが、お盆期間で既にどこも予約で一杯だった。

 

「では宿泊地をどうしよう?」となったが、結局は深く考えないことにした。
ネット上ではなくても、現地なら宿泊できそうな宿や施設が見つかるかもしれないし、最悪夏なら野宿もできる。「何とかなるだろう精神」だ。

 

こうして「津軽海峡フェリー」と「新日本海フェリー」のチケットだけ予約し、旅の大枠を決めた。

一見すると隙だらけのように見えるが、「あらゆる状況に対応できる隙の無い計画」と言えよう。


続いて装備選定へと移る。


今回の自転車旅もキャリアなどは使わず、基本的にバックパック1つの機動性を重視したスタイルだ。
それと、先日の矢島カップには間に合わなかったが、注文していた心拍センサーも届いたので装備に加えた。
今回はロングライドを移動の手段としてだけでなく、トレーニングの場として考えていた。ダラダラ走るのではなく、質の良い走りを心掛ける。


その際に、スマホアプリのStraveで走行ログを取りながら走れるようにトップチューブバッグを購入した。前の自転車旅の時にも使おうかと検討していたが、「ペダリング時に脚が当たって邪魔」などの評判を聞いていたので、導入には至らなかった。しかし今回はStrave、Googleマップ、音楽再生(熊よけも兼ねる)と、スマホをフル稼働することになる。バッテリーの心配をしながら走りたくなかったので、トップチューブバッグ内のモバイルバッテリーからハンドル上のスマホを充電しながら走ることにした。バッグにはバッテリーだけでなく、補給食なども収納する。走行中と、走行後に充電できない可能性を踏まえ、モバイルバッテリーは2つ持っていく。


日取りが決まり装備も整い、後は出発当日を待つのみとなった。


100km越えのロングライドは前回の自転車旅以来、5年振りだった。特に初日は最低でも150kmは走る計算だった。
しかし、今回の自転車はカーボンフレーム・アルテグラ・エンデュランス向けの「GIANT / DEFY ADVANCED PRO 1」と以前よりも格段にグレードアップしている。それに、6月の「鳥海山ヒルクライム」と7月の「矢島カップ」に合わせてトレーニングも行っていたので、体力面での不安は全くなかった。


心配は旅の期間中の天気だった。

 

週間天気予報を見る限りでも、北海道上陸予定の8月15、16日にビッシリ雨マークが並んでいる。雨の中でも走れるが、それが2日間も続くのはかなりシンドイ。家に帰れるならシャワーや着替えでリフレッシュできるが、旅の間はそれらも制限される。しかも、状況によっては間に野宿を挟む可能性さえある。当日までに何とか天気予報が上方修正されることを願っていたが、状況は変わらないまま出発の朝を迎えることとなった…

 

 

 

2018年8月13日


午前9時30分

 

 

青空と照り付ける太陽の下、秋田市内の自宅を出発する。

しかし、私の心は暗澹としていた。理由は雨マークの並んだ天気予報に他ならない。

 

予報は上方修正するどころか、日を追うごとに悪化していた。それは今度の旅がより困難になるであろうことを明示していた。去年、同時期に「北アルプス縦走」を行った際にも、直前に台風接近の報せを受けて不安の中での出発となった。それでも北ア縦走に関しては、過酷な状況下で己のサバイバビリティが試されることに燃える部分があった。対して今回の自転車旅は、「秋田〜苫小牧を走破したところで何なのだ」というのが正直な所で、どうせなら良いコンディションでやるに越したことはなかった。

 

そんな訳で、かつてない程気の進まない中での旅立ちとなった。

とはいえ、少なくとも今日明日の予報が好天となっていたのは救いだった。やると決めたからには、その与えられた環境下で楽しむしかない!

 

まずは初日の目的地「大館」を目指し、秋田市内の国道13号線を走る。

市内から大館へ行くには、県道285号を通るのが最短ルートだ。これなら100km弱の走行で済む。
しかしこのルートは先日の「岩木山」山行時に偵察して、面白味に欠けるという理由から却下した。


今回採用した内陸ルートは、去年参加した秋田内陸ウルトラマラソンのコースを通ることになる。
距離的には大幅に遠回りとなるが、思い入れのある風景なので色々と懐かしみながら走ることができるだろう。

 

因みに今年は、秋田内陸の代わりに「田沢湖マラソン」に参加する予定だ。私は、ウルトラの経験はあるがフルマラソンを走ったことがないので、どれくらいのタイムが出せるか挑戦の意味でエントリーしてみた。田沢湖は開催日が秋田内陸と1週間しか変わらない。今年はフルマラソンにフォーカスする為、100kmマラソンはお預けだ。


道中「ボートピア河辺」や「みちのくコカコーラ 秋田工場」など、地元民にはお馴染みの光景を眺めながら進んでいく。13号線からの風景は小さい頃から見慣れたものではあったが、自転車で走るのは初めてだ。アップダウンが激しく交通量も多い為、車への注意が必要だが、路側帯があるだけマシだった。自転車で、特に地方を走る際には、道路整備が行き届いていない箇所が多いので事故には気を付けたい。


トップチューブバッグは、最初こそ登り坂でダンシングする時など脚にガンガン当たって鬱陶しかったが、直ぐに慣れた。
それよりもバッテリーの心配をせずに走れたりゴミを一時的に入れたりと、利便性の方が際立った。今後ロングライドの必需品となりそうだ。

 

スタートから1時間で大仙市に入る。緩やかな下りにも関わらず、自然とスピードが50km台半ばまで出て焦った。
路側帯が狭くすぐ横を車がビュンビュン通る上に路面が荒れていた為、車体スピードとバランスの制御に意識を最大限集中させて通過した。
協和町に入ると路面が更に荒れ出した上に所々路側帯がない箇所も現れた。車道での走行が難しい所は無理せず歩道を走る。


国道13号線から県道46号線へと移り、角館に向けて進路を東に取る。途中、道の駅「協和」でトイレ休憩を挟んだ。

 

 

お盆ということで、道の駅は家族連れやツーリストで賑わっていた。

路上の秋田銘菓「ババヘラアイス」にはちょっとした行列ができていた。

 

前傾姿勢で走り続けることで徐々に腰が痛くなってきたのでストレッチする。背中のバックパックも腰痛の一因だ。更に、夏場なので照り付ける日差しも厳しい。どんどん身体から水分が奪われていく。これから山に入り人里から離れる。補給には気を付けなければなるまい。

 

身体をほぐしたところで再出発する。

46号線沿いの田園風景は牧歌的で、走りながら眺めていると癒された。
 

道路の舗装状態も良く、46号線は自転車乗りにはご機嫌な道だった。

 

1時間も経たずに再び腰痛の症状が現れた。それに、足先や臀部にも痺れが出始めていた。加えて大腿筋に張りも感じる。

「2013年に600km自転車旅をした時はこんなアッサリと身体が悲鳴を上げたっけ?」と疑問に思う。

 

当時は荒川サイクリングロードを週に200kmくらい走っていた上に、月間100km〜200kmジョギングしていた。身体は羽が生えたように軽く、筋肉痛とも無縁だった。結果的に無理が祟って膝を壊すことになったが、身体に物凄くキレがあった。今は当時より速く走れるようにはなっているが、年齢も確実に重ねているのだと実感する。「マラソンコースに合流したら峠越えが待ち構えているが、大丈夫だろうか…?」

一抹の不安がよぎる。

 

スタートから2時間10分程で最初の50kmを走破し、角館に到着した。

武家屋敷近くのファミマで一旦ストップする。ここからマラソンコースに合流するのだが、その前に燃料補給だ。
 

チョコモナカジャンボ(302kcal、脂質16.7g)


食事制限中には食べられないが、この後走る距離を考えればカロリーなど気にする必要はない。


ファミマ横には見覚えのある坂があった。秋田内陸マラソンの序盤、沿道で応援していたおじさんがスピーカーからZARDの「負けないで」を流していた坂だ。この「負けないで坂」からマラソンコースへと合流し、100kmに渡る辛くも愉しかった記憶を辿る旅路が始まる。
 

 

坂を下り町を抜け、直線的な田園地帯へと入っていく。
「あぁ、ここに第1エイドがあったな」「ここの仮設トイレは混んでたな」と、およそ1年前のことを振り返り懐かしむ。
途中、何組か自転車乗りとすれ違った。改めてマラソンだけでなく、ツーリングやトレーニングにもいい道だと思った。


マラソンコースの20km地点、30km地点を通り過ぎていく。「ここら辺はまだ余裕があったな」「この辺りから血行障害になったっけ」など思いながらペダルを回す。ここまで決して楽なライドではなかったが、マラソンの時と比べたら周りの景色を見る余裕があった。あの時見落としていた秋田内陸線の電車や駅舎がよく目に付いた。

 

田園風景の中を秋田内陸線がのんびりと横切る。

 

初日最大の山場の比立内の峠は40km地点にある。
その前にトップチューブバッグからマイプロテインのフラップジャックを取り出し、走りながら食べる。相変わらずカロリーを感じさせる味だ。


午後1時、山岳区間が始まった。
本格的な登りの前に、まずは何度かアップダウンとロックシェッドを通過する。
 

 

先に進むにつれて樹々がより密生し、山奥深くに来たことを感じさせる。

その分、木陰を走る区間も増えるのでありがたい。

 

ジャージの背面ポケットに忍ばせていたエナジーゼリーを飲み、フレームホルダーのボトルを1本空にした。バックパック内のハイドレーションも大分軽くなってきた。手持ちにはボトルに水が500ml強と、エナジーゼリーが2本あった。峠越えの10km、水分補給に関してはこれだけあれば十分だろう。比立内に着けば補給できるはずだ。


13時半、マラソンでエイドステーションがあった場所から本格的な登りが始まった。

 


ダンシングと乙女ギアをローテーションしながらじわじわ登っていく。
心拍数は30km巡行時で135くらいで、峠越えや踏み込んだ時で150台前半と、基本的に低い数値を保っていた。

 

マラソンではキツかった登りも、自転車なら幾分か楽に感じた。2013年の箱根越えの時はキツくて一度足を着いた記憶があるが、ヒルクライム大会を2度経た今となっては必要ない。心身共にヒルクライムを楽しむ余裕があった。

 

 

およそ20分で最高地点まで辿り着いた。案外アッサリと登ってしまった。

下りはもっと楽だ。マラソンの時は歯を食いしばって足を引き摺りながら下った坂を、逆にスピードの出し過ぎに注意しながら駆け抜ける。

 

自転車の最大の長所は、小さな登りなら助走の勢いで越えられるところにある。それに勢いで越えられない登りも、下りで脚を休められるから頑張れる。ランニングは登りで頑張ったところで、消耗度の割りにタイムを短縮できないのがツライ。足を引き摺りながらひょこひょこ登り下した坂を、自転車で3〜40kmであっという間に通り過ぎられては、ランナーからしたら堪らないだろう。とはいえ、自転車とて決して楽ではない。全力で走っていればどっちもキツイのだ。

 

しかし、時速3〜40kmで飛ばしているにも関わらず、50km地点の比立内までの10kmがやたら遠く感じた。
「そりゃ、マラソンだといつまで経っても着かない訳だ」と納得。10kmは実に長いのだ。


下りが終わり、マラソンの50km地点に到着。道の駅「あに」で休憩する。
ここまで走行距離は100kmを超えていた。峠と共に初日の山場は越えたと、一安心する。

 


ブドウとバニラのミックスソフト。美味い。

 

比立内でお金を使った時に気付いたが、私のサイフにはこの時、現金が3千円程しか入っていなかった。勿論クレカやキャッシュカードはあったが、「田舎で旅をするのに現金を持っていかないとはどういうことだ!お前何年田舎住んでんだ!」と自らを叱責するも、「クレカを持つようになってからは1年だ!!」ともう1人の私が反駁した。


休憩室でドリンクを飲みながら涼む。テレビからは甲子園が流れていた。日本の夏の風物詩を眺めながら、「球児たちのように俺も頑張ろう」と、気合を入れ直す。出発前に壁に掲示されていた周辺地図を見ていると、地元のおじさんに「何処から来たの?」と声を掛けられた。「市内からです。角館を通って」と答えると、「山を越えてきたの?」と驚かれた。更に苫小牧に向かっていることを告げると、更に驚くおじさんだった。


この先は暫く補給や休憩できる場所が無いので、15分にも満たない休憩中にトイレを2度済ませてから再出発する。


緑溢れる田園風景を快調に走る。ここにきていつの間にか腰の痛みが和らいでいた。

休憩を挟んだことで脚力が一時的に戻り、お尻の痛みがリフレッシュされたのも大きい。お陰で快調なペースで距離を稼ぐことができた。

マラソンでは50km過ぎからは地獄のような脚の痛みと戦っていたが、この日は疲れはあったものの楽しみながら走っていた。


カミーノのオセブレイロ峠に似た景観の60km地点は、マラソンコースでは迂回したトンネルを通り時間短縮した。ドリンクが尽きた為、阿仁合の町中の自動販売機でデカビタを購入。少し飲んでからボトルに移し変える。走りながら飲むと手がベタついてくるが元気の出る味だった。


比立内から1時間で、80km地点のババヘラエイド地点まで来た。秋田市内から最短ルートならここまで65km程度だが、サイコンの走行距離は既に130kmを超えていた。およそ倍の距離を走っていた。地図を見るだけでも物凄い遠回りをしたことが分かる。だがその価値はあった。身体は充実感で満ち溢れていた。


ここからマラソンでも苦しめられた強風田園区間を通り、大館能代空港方面へと向かう。そこを過ぎれば鷹巣は直ぐだ。

 

その前にローソンに入り、おにぎり2個と炭酸水とアイスコーヒーで燃料補給する。めちゃくちゃ美味い。レジのおじさんに静岡から日本1周中の自転車乗りが来店したという話を聞いた。私の父も数日前にそんな人を見たと言っていた。同一人物の可能性が高そうだ。私自身もこの旅の間に自転車旅をしている人たちを何組も見掛けた。すれ違う時は「お疲れっす!」と挨拶していた。彼らは皆、同志だ。

 


強風田園区間は自転車で走っても「まだ続くのか!」というくらい長かった。
田園区間から右に折れ、アップダウンを繰り返す。腰の痛みはなかったが、脚の裏側が全体的に疲労で痛み出していた。

 

16時20分、大館能代空港裏の交差点まで辿りついた。
強風田園区間からここまで掛かった時間は20分程度だが、物凄く長く感じた。「よくマラソン走りきったな」と、感慨深くなる。


鷹巣の町並みを望みながら坂を下った後、西日差し込む西鷹巣大橋を渡る。

 

 

マラソンの時もそうだったが、夕方のこの場所は「遂にここまできた!」という感じがする。

橋を渡り終えると、市役所方面へと町中を走る。

 

心寂しげな様相を呈したシャッター街と市役所庁舎を通り過ぎ、晴れてウルトラマラソンのコースを走破した。

100kmに及ぶ追憶の旅は改めて大変な道のりだったが、この1年を振り返る良い機会となった。何より景色が綺麗だった。

 


町中でセブンイレブンがあったのですかさず入店。秋田の田舎のコンビニシェアは、「ローソン>>>ファミマ>>セブン」といったところだが、ようやく見つけた。セブン銀行のATM手数料24時間365日無料の新生銀行キャッシュカードが火を噴く時が来た。現金を引き出して、これで怖いものなしだ。


後は大館を目指すのみだが、その前にたかのすモールで小休止する。

 

 

和菓子とチョコモナカジャンボ、それと「ハイボールで晩酌かっ!」という量のレモンフレーバーの炭酸水を買う。
この旅で分かったのは炎天下で飲む炭酸水の美味さだ。余った分はコンビニのアイスコーヒーの氷と共にボトルに移しておく。

 

燃料補給が済んだところで、本日の目的地目掛けて最後のひとっ走りと行く。

大館までは後20km…ここまで来たら、最早オマケのような距離だ。


まずはたかのすモールから国道105線を北上する。

 

田んぼに落ちる西日が眩しくも美しい。

 

10分程で国道7号線に合流。後は新潟から秋田県内を通り青森まで伸びるこの道を東に15km進むだけだ。


7号線は交通量が多いものの、路側帯があり舗装状態も良好で快適に走ることができた。
そして、既に150km以上走行しているのにも関わらず、脚は良く回り、巡航速度30kmオーバーをキープしていた。
途中シンドイ箇所も多々あったが、ここまで粘りの走りを続けていた自身の底力に驚く。


その一方で、私にはロングライドの際に所々での小休止が必要だということも分かった。ずっとサドルの上だと、腰と尻が痛過ぎてペダルを漕ぐどころじゃないのだ。思い返せば、2013年の旅では途中マック休憩を挟んだりしていたから大して腰痛に苦しめられなかったのかもしれない。

そう考えると、グランツールを走るロードレーサーたちの何と恐ろしいことよ…
 

 

午後6時、大館に着いた。


初日の走行時間7時間4分、走行距離は170km。ワンデイライドの自身最長距離を走った。

久々のロングライドはすこぶる充実感があった。それに好きなものを食べながら旅できる何て、自転車旅はやっぱり最高だ。

 

早速、仕事終わりの本日の宿のオーナーである友人にコンタクトを取り、町中の銭湯で集合することになった。
この流れは2013年の旅の名古屋を思い出す。

 

 

この日の風呂は岩盤浴で爆睡した名古屋のスーパー銭湯と比べたら物足りない設備だったが、1日汗だくになって動き続けた身体と心を蘇らせるには十分だった。入浴前に体重を量ったら、66.4kg→64kg になっていた。半分は水分だろうが、やはりかなりのエネルギーを燃やしたようだ。

 

その後、友人とガストで夕食を取る。今日1日、ライドだけで3,000kcal以上消費した私の身体はビッグミールを欲していた。私はハンバーグやフライなどの1,000kcalオーバーのミックスプレートを注文したが、「こんなの運動していない人間が食べたら大変なことになるな」と苦笑する。

 

夕食後は明日に備えて食料を調達する為にスーパーに寄った。夜食用にカッテージチーズとさつま揚げを、朝食用にパンやサラダチキン、補給食としてエナジーゼリーを(サイフを車に忘れたので友人に立て替えてもらい)購入した。

 

2日目は大館〜青森の約90kmと、今日に比べたら楽な行程だ。だが山中を走る場合、常にある程度の補給食を携行することが重要だと今回学んだ。多少邪魔になっても、途中で燃料切れを起こさないことの方が大切なのだ。そういう訳で、ガッツリ食料を(人の金で)買い込み、「明日以降も続くロングライドの旅を乗り切るぞ!」という強い意気込みでいた。

 

この時までは…

 


友人宅に移動してから事態が一変した。

 

スマホで天気予報を確認したら、翌日以降が深刻なレベルで悪化していたのだ。15、16日は北海道だけでなく、本州もかなりの大荒れになることが予想された。それも北東北は「大雨」「洪水」「濃霧」など注意報のオンパレードだった。これでは野宿どころの話ではない。それ以外にも、天気予報から聞こえてくるのは、「土砂崩れに警戒」「24時間雨量が多いところで200mmに達する恐れ」「恐怖を感じるレベルの大雨」など、ネガティブな情報ばかりだ。

 

一気に陰鬱な気持ちになってくる。ショックのあまり、友人に立て替えて貰った金を返すことも忘れていた。

雨の中を走る覚悟はあったが、話はそれでは済まなくなっていた。最悪の場合、走行すらできない可能性もあった。

 

状況を整理する。

 

明日14日はまだ大丈夫そうだったが、その後2日間はどうあがいても大雨の中を走ることになりそうだ。

そして一旦北海道に上陸してしまえば、200km移動しないことには秋田に帰ることもできない。


では走行不能な程の大雨が降ったらどうするか?

 

苫小牧まで行く手段はある。手っ取り早いのは「スーパー北斗」での輪行だ。これならものの数時間で函館〜苫小牧を移動できる。だがフェリー乗船日に合わせるには、函館か苫小牧で1日停滞する必要がある(しかも大雨の日に)。それに、今回は輪行に必要な輪行袋を持ってきていなかった。現地で入手するとしても輪行袋だけでなく、自転車を保護するエンド金具やスプロケットカバーなども必要だ。1万円近くの出費を要するだろう。

 

頭を抱えたくなった。

隙だらけのように見えて隙の無い計画だと思ったら、実はやっぱり隙だらけの計画だった。

 

フェリーの予約をキャンセルすると、キャンセル料は取られるがそれでも2千円程度。北海道で意味の分からない輪行に2万払うのに比べたら全然許されるレベルだ。それに大館でUターンして明日中に帰れば、2日間で秋田県内1周とスケールは小さいが、雨の中走らずに旅を完結できそうだった。

 

 

気が付けば、行くことよりも「行かない理由」を考え始めている自分がいた。

友人が困り果てた私の顔を見て、こう言い放った。「何でそこまでして北海道行くんだ?頑張りどころはそこじゃないだろ」

 

至極まっとうな意見だった…

私にしても、そんな手間・暇・お金を掛けてまで北海道に行く理由は一つもなかった。

 


悩んだ末に私が下した決断は「撤退」だった。
 

 

最終判断は明朝の天気によって下すにしても、無理な強行軍は行わないことにした。

「今日1日には十分満足したし、明日だって行きと違うルートを楽しめる…うん、悪くない旅だ」そう決めたら、何だか気持ちが楽になった。

 

それでも、やっぱり悔しい気持ちはあった。

「もし、苫小牧inのルートだったら」「あわよくば明日天気予報が良くなって…」と思わずにはいられなかったが、天気ばかりはしょうがない。

 

翌日に備えて買い込んでいた夜食を虚しく眺める。

だがここは無理してでも食べなければならない。明日も100km走るのだから…

 

 

2018年8月14日


午前7時30分

 

苦渋の決断から一夜明け、出発の準備をする。

空は雲が多いものの、清々しく朝日が降り注いでいた。

 

未だ後ろ髪を引かれる思いでいた。

この日が朝から雨なら簡単に諦めがついただろうが、これだけ天気が良いと「行っちゃおうかな…」という気が起きてくる。

だがこの賭けは分が悪すぎる。どう考えても、ハイリスク・ローリターンだ。

 

世話になった友人と別れ、ペダルを漕ぎ出す。

進む方角は西…結局私は北海道上陸を諦めて、秋田市内に戻ることを選択した。借りた金を返さずに…

 

まずは昨日走った7号線を鷹巣方面へと戻る。帰りは日本海沿岸から行くルートにした。

上小阿仁を通るルートよりは遠回りになるが、苫小牧まで行く気だった身としては最短ルートでこの旅を終わらせてしまうのは物足りなかった。

 

どんよりとした空模様の下、無心でペダルを漕ぎ続けていると、早々に腰と尻が痛くなってきた。

体調は良かったが、やはり各部位には昨日の疲れが残っているようだ。こまめな停車を心掛け、まずは道の駅「ふたつい」で最初の休憩を取る。

 

 

どっかのタイミングで食べようと思っていたババヘラ。

 

奥羽本線沿いを西進していく。地形的には大してアップダウンもなく楽だったが、腰痛が酷くこの区間はただ走るだけでもツラかった。

途中のコンビニに止まり、休憩がてらフェリー予約キャンセルの電話をした。これで後は帰るだけだ。「さらば函館…さらば苫小牧…」


三種町を通って大潟村へと入る。ここの平坦区間の逆風がキツかった。そういう場所は無理せず適当に流しながら走ればいいのだが、「TTのトレーニングだ!」と意地になって踏みまくった…が、余りにも延々と続く道に途中で失速してしまった。


一目散に帰宅するのではなく、大潟村の「ポルダー潟の湯」で風呂に入っていく。丁度この時間に行われていた甲子園の地元秋田県勢を応援する為だ。この日は本大会屈指の好投手の吉田選手有する秋田金足農業が岐阜の大垣日大相手に勝利したことで、ポルダー潟の湯内は大盛り上がりだった。「いやぁ、こんな好ゲームを観戦できたのも撤退を決断したからだ!」そう考えると、気持ちが静まってきた。(追記:この年の記念すべき100回大会で、金農はまさかの準優勝という神懸かり的な大躍進を成し遂げた。夢と感動をありがとう!!金農ナイン!)

 

野球観戦を終え、市内に向けて再出発する。残りは40km程だ。

 

大潟村の平坦区間はまだ続く。相変わらず逆風がキツかった。


八郎潟を走行中、いきなり目の前を黒い影が横切った。「何だ!?」と思いよく見たら、羽根を広げた猛禽類だった。

物珍しさから、慌てて停車して写真を撮ろうと思ったが逃げられてしまった。

 


小さく写ってるのがそれ。恐らくチュウヒだと思われる。

 

八郎潟

 

水門

 

2日目後半は腰の痛みが引いたが、ハムと尻の付け根にできたできもののせいでとにかく尻が痛かった。
脚は疲れていたが、痛みなどはなかった。

 

帰りがけに普段よく自転車トレーニングで来る出戸浜で、Stravaのタイムトライアルを行ったら、ベストタイムに5秒と迫る好タイムが出た。
ここまで2日間、完全装備で270km以上走行してきたのにも関わらずだ。この旅の間で多少は成長したのかもしれない。

 

秋田港の新日本海フェリーのターミナル横を通る。

 

 

「本当なら3日後にここにいたはずなのに…」と、やっぱり寂しい気持ちになる。

「いつかはここから自転車旅をしてみてぇな…」そう思った2018年の夏だった。

 

 

 

かくして雨に打たれることもなく無事、我が家に辿り着いた。

2日目の走行時間は4時間37分、走行距離は120kmだった。

 

結果的には楽しい2日間だったし、良いトレーニングにもなったので、今回の旅に特に不満は無い。

失ったのはフェリーのキャンセル料くらいなもんだ(あ、借りた金は返さなきゃ)。

 

だが、翌日以降の天気に関しては「行かなかったことを後悔しないように、(災害にならない程度に)大雨になってくれ!」と心中祈る卑屈な私だった。しかし蓋を開けてみると、翌日秋田市内は概ね晴れ、その後もそこそこの雨しか降らずに大型連休を終えた(笑)

 

そこそこの雨が降る間、ふてくされた私はPrime VideoでHBO製作のTVシリーズ「GENERATION KILL」を観ていた。

その中で本旅を締めくくるのにふさわしいスラングが出てきた。

 

Screwby / 意味:(良くも悪くも)ヤべェ


畜生!!この旅、企画倒れもいいところだぜ!(泣)

 

 

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